2歳戦が始まってから既に半年以上が経過したが、今年の2歳世代がファーストクロップになる新種牡馬たちの活躍状況がどんなものか気になって調べてみた。

下記は今年ここまでに行われた2歳重賞の勝ち馬とその父の一覧である。

【JRA】
函館2歳S:ハートオブクイーン(父ジョリーズヘイロー)
新潟2歳S:エフティマイア(父フジキセキ)
小倉2歳S:マルブツイースター(父サクラバクシンオー)
札幌2歳S:オリエンタルロック(父マンハッタンカフェ)
デイリー杯2歳S:キャプテントゥーレ(父アグネスタキオン)
ファンタジーS:オディール(父クロフネ)
京王杯2歳S:アポロドルチェ(父Officer)

JRAではまだ新種牡馬の仔が重賞を勝つまでには至っていない。期待を集めているシンボリクリスエス、アグネスデジタルらの産駒が今一息。昨年の今頃はタニノギムレット、アドマイヤコジーン、ジャングルポケット産駒が既に重賞ウイナーとなっていたのに比べれば大人しいスタート。

【地方】
栄冠賞(旭川):マサノミネルバ(父ラムタラ)
イノセントC(旭川):エックスダンス(父アドマイヤベガ)
リリーC(旭川):ストロングライデン(父エイシンサンディ)
BGJC(旭川):ジェイドファスト(父ジェイドロバリー)
フローラルC(旭川):カミヒコーキ(父マイネルラヴ)
サンライズC(旭川):バイタリティー(父アラムシャー
エーデルワイス賞(旭川):マサノミネルバ(父ラムタラ)
北海道2歳優駿(札幌):ディラクエ(父フサイチコンコルド)
ジュニアGP(盛岡):ジェベルロバーツ(父ウェイオブライト)
鎌倉記念(川崎):ヴァイタルシーズ(父カコイーシーズ)
ローレル賞(川崎):マダムルコント(父メジロライアン)
平和賞(船橋):ノースダンデー(父ダンシングカラー
兼六園ジュニアC(金沢):エムザックライアン(父タイキブリザード)
ゴールドウィング賞(名古屋):イーストミー(父レギュラーメンバー
ジュニアクラウン(笠松):チェイリュイ(父カルラネイチャー)
園田プリンセスC(園田):タッカールーラー(父アジュディケーティング)
九州ジュニアGP(荒尾):コトブキムーン(父ハンセル)

地方競馬では今年がファーストクロップとなる新種牡馬の産駒が3頭重賞ウイナーとなっている。

アラムシャー
父Key of Luck(Danzig系)
母Alaiyda
母父シャーラスタニ(Nijinsky系)

現役時代は2003年のアイルランドダービーと“キングジョージ”を制している。アイルランドダービーでは後に凱旋門賞を制するダラカニ相手に勝利を収めている。2003年に我が国に輸入され、初年度の2004年は60頭を超える肌馬を集めたものの、翌年には種付頭数が4頭にまで激減。アイルランドに輸出された。しかし、今年に入り、産駒が活躍。上記のように重賞ウイナーまで輩出した。10月に再度日本に輸入されたようだ。

ダンシングカラー
父ダンシングブレーヴ(Lyphard系)
母シビルコンクエスト
母父Conquistador Cielo(Mr. Prospector系)

ジャングルポケットが勝った2001年のダービーで11番人気ながら3着に食い込んだ(クロフネに先着)。ダービー後は活躍できず最終的なクラスは1000万下。現役時代の主な勝鞍はベンジャミンS。現2歳世代はJRAに現在6頭登録されているが、産駒の絶対数が少ないため、地方競馬においてとは言え、重賞ウイナーを出したのはなかなか凄い。

レギュラーメンバー
父コマンダーインチーフ(Lyphard系)
母シスターソノ
母父ナスルエルアラブ(Lyphard系)

女傑ロジータの孫に当たる馬で、現役時代はダービーGP、川崎記念、JBCクラシック(初代王者)とG1級レースを3勝した。なお、川崎記念は祖母ロジータ、叔父カネツフルーヴが制しており、この一族に非常に相性の良いレース。現2歳世代は現在JRAに8頭登録されている。現役時代本人がそうだったように、産駒は地方向きの産駒が多いものと思われる。
24日、札幌競馬場で行われた2歳未勝利(ダート1700)を勝ったのはエアーミラクル(牝2、北海道・楠克美)。彼女の父は2000年のクラシック2冠馬エアシャカールでこれが産駒初勝利となった。

エアシャカールは父サンデーサイレンス(Halo系)、母アイドリームアドリーム(その父Well Decorated(Bold Ruler系))という血統で半姉に牝馬クラシック路線で活躍したエアデジャヴー(父ノーザンテースト)、全弟に現役で活躍中のエアサバスがいる。現役時代は栗東・森秀行厩舎に所属。2000年に皐月賞、菊花賞を制し、東京優駿がハナ差2着だったことから「準3冠馬」の異名を持つ。1つ上の世代に“世紀末覇王”テイエムオペラオー、1つ下の世代にジャングルポケット、クロフネらがいたため、クラシック後は成績が伸びず、通算成績20戦4勝に終わった。

2003年から種牡馬入りしたが、2003年3月13日に放牧中の事故により残念ながら永眠している。享年6歳。種付けシーズンに入ったばかりの逝去だったため、種付け頭数は11頭、産駒は4頭に止まっているが、エアーミラクルはその数少ない産駒のうちの1頭ということになる。

産駒が少なすぎるうえに、同馬が既に鬼籍に入っているため、「頑張れ」とは口が裂けても言えないが、父の高い能力を受け継いだ産駒が1頭でも登場してくれることを願わずにはいられない。

25日、船橋競馬場で行われた平和賞(南関東G3、ダート1600)に勝ったキンノライチョウ(牡2、船橋・岡林光浩)の父はマチカネキンノホシ(牡10)でこれが産駒の初重賞制覇となった。ちなみにマチカネキンノホシ産駒で勝利を挙げているのは、中央、地方を通じてキンノライチョウただ1頭である。

マチカネキンノホシはこちらでも記事にしたが、種付け頭数が非常に少なく、とても順風満帆な種牡馬生活とは言えない状況だが、孝行息子が現れたようだ。現役時代、大きな期待を集めながら、期待に応えたとは決して言えない成績であったマチカネキンノホシ。種牡馬としての戦いはまだ始まったばかりである。
14日、オーストラリアのCaulfield競馬場で行われたCaulfield Guineas(G1)で、優勝したWonderful World(牡3、J.Cummings厩舎)の父はアグネスワールド(牡11)でこれがオーストラリアにおけるG1初制覇となった。

アグネスワールドは父Danzig(Danzig系)、母Misteries(その父Seattle Slew(Seattle Slew系))という血統で、現役時代は栗東・森秀行厩舎に所属。1999年にPrix de l'Abbaye de Longchamp、2000年にJuly Cupと海外G1を2勝したワールドクラスのスプリンターだったが、日本では2000年のスプリンターズS2着(優勝馬ダイタクヤマト)が最高でG1勝ちはなかった。現役時代気付いていた方も多いと思うが、コーナリングが非常に下手な馬であり、コーナーを回らなければならない日本のスプリントG1では全能力を発揮できなかったようだ。

現在、アグネスワールドは社台スタリオンステーションに繋養されているが、2002年、2003年に海外で種牡馬生活を送っていたため、日本国内では今年デビューする産駒はいないことになる。現在までのところの国内での出世頭は東京盃など交流重賞戦線の常連アグネスジェダイ(牡4、栗東・森秀行厩舎)ということになるだろうか。

現役時代から世界的良血として話題を集めていた馬だが、その名の通り、彼の血は世界に通用しつつある。国内での種付け頭数はそれほど多くはないが、もっと彼のワールドレベルのスピードに注目してもいいのではないだろうか。
17日、大井競馬場で行われた第5R(ダート1400)で勝利を収めたヒロヤスハリケーン(牝3、大井・武智政明厩舎)の父はレオリュウホウ(牡11)でこれが産駒初勝利となった。

レオリュウホウは父ダンシングブレーヴ(Lyphard系)、母キヨヒホウ(その父ルイスデール(Owen Tudor系))という血統。3歳時に10番人気でセントライト記念(江田照男騎乗)、5歳時には9番人気で日経賞(菊沢隆徳騎乗)に勝ち、忘れた頃に飛んでくる穴馬というイメージが強い馬だった。特に5歳時の日経賞では海外遠征を視野に入れていたグランプリホース・グラスワンダーを完璧に粉砕して、ステイゴールドとの馬連は470倍を超える大波乱となった。通算成績は25戦4勝(重賞2勝)。

産駒数はとても少ないが、父同様、忘れた頃にあっと言わせる産駒が出現するのかどうか(状況は非常に厳しいが)注目していきたい。

【追記】
競走馬のふるさと案内所でも彼の供用先が分からず。情報を持っていらっしゃる方はご一報を。
9日、札幌競馬場で行われた2歳未勝利(芝1500)で勝利を収めたニシノプライド(牡2、栗東・宮本博厩舎)の父はセイウンスカイ(牡11)でこれが産駒のJRA初勝利となった。

セイウンスカイは父シェリフズスター(Hyperion系)、母シスターミル(その父ミルジョージ(Mill Reef系))という血統。現役時代は美浦・保田一隆厩舎に所属。スペシャルウィーク、キングヘイローらがいたハイレベル世代の1998年クラシックで皐月賞、菊花賞の2冠を制覇。類稀なスピードとスタミナを見せ付けた。通算成績は13戦7勝(重賞5勝)。彼の父シェリフズスター(Sheriff's Star)はコロネーションCやサンクルー大賞に優勝した名馬だったが、産駒は総じてスタミナ色が濃く勝ち上がれない産駒が多く出たため、セイウンスカイが活躍する頃には「行方不明」になっていた(「行方不明」が何を意味するかは競馬ファンなら分かるはず・・・)。

セイウンスカイ自身もその豊かなスタミナを受け継いだ血統背景が嫌われたのか、スタッドイン直後から十分な肌馬を集めることが出来ず、2002年から2005年までの種付け頭数が100頭にも満たず、(クラシック2冠馬ということを考えれば)種牡馬としては大苦戦が続いている

同期のライバルだったスペシャルウィーク、キングヘイローは早くもG1ホースを輩出し、有馬記念で対決したグラスワンダーもステークスウィナーを輩出している。父としての対決は始まったばかりとは言え、セイウンスカイに残された時間は我々が想像する以上に少ない。
今日は新潟、小倉で2歳重賞が行われたが、両レースとも優勝馬の父は今年のフレッシュマンサイヤーとなった。

まず、小倉競馬場で行われた小倉2歳S(G3)を優勝したのは鮫島良太騎手(重賞初制覇)騎乗のアストンマーチャン(牝2、栗東・石坂正厩舎)で彼女の父はアドマイヤコジーン(牡10)。現役時代は1998年の朝日杯3歳S(当時)を制覇。その後、故障もあり低迷期が続いたが、6歳初戦の東京新聞杯(G3)で復活Vを遂げると、その年の短距離戦線の中心勢力として活躍。安田記念では7番人気の低評価ながら優勝し、後藤浩輝騎手にJRA・G1初制覇をプレゼントしている。2002年の香港マイル4着を最後に現役を引退。2003年から種牡馬入りしている。早い時期から活躍した仕上がりの早さに加え、加齢してから更なる成長力を見せた同馬の生産地における評価は高く、初年度から高値安定の肌馬を集めている。現在は、社台スタリオンステーションに繋養されている。これまでのところ、父同様、仕上がりが早く、豊かなスピードを見せている産駒が目立つ。

新潟競馬場で行われた新潟2歳S(G3)を制したのはゴールドアグリ(牡2、美浦・戸田博文厩舎)で彼の父はタニノギムレット(牡7)。現役時代はシンザン記念(G3)で重賞初制覇を果たすと、アーリントンC(G3)、スプリングS(G2)と重賞を3連勝した。圧倒的な1番人気で臨んだ皐月賞こそノーリーズンの大駆けを許し3着、続くNHKマイルCでも直線で前をカットされる不利を受けテレグノシスの3着に敗れたが、東京優駿ではそれまでの鬱憤を晴らすかのような豪快な末脚でシンボリクリスエス、ゴールドアリュールらを一刀両断にし、見事に世代の頂点に立った。秋シーズンは神戸新聞杯へ向けて調整が続けられていたが浅屈腱炎を発症し、引退に追い込まれた。現役時代に見せた距離適性の幅の広さから、スタッドイン直後から多くの肌馬を集め、ブライアンズタイムの有力後継種牡馬として大きな期待を受けている。現在はアドマイヤコジーン同様、社台スタリオンステーションに繋養されている。2002年クラシック世代はシンボリクリスエス、ゴールドアリュール、アドマイヤドンらがおり、近年では最強世代と呼んでも良い層の厚さを誇る。競馬にタラレバは禁物だが、上記の馬たちの古馬になってからの活躍や、現在も現役で頑張っているテレグノシス、バランスオブゲームらがまだ重賞戦線のフロントランナーであり続けていることを考慮に入れると、タニノギムレットが故障なく古馬になっていれば更にG1勝利を積み重ねたであろうことは想像に難くない。

まずは両馬が今年のフレッシュマンサイヤーのリーディング争いで一歩抜け出した形となった。「新種牡馬の評価は初年度産駒で決まってしまう」という現在の生産界だけに、上々の滑り出しを見せた両馬には、孝行息子(娘)の活躍は最高の朗報になったに違いない。
本日の旭川競馬第3R(ダート1,000m)で勝利を収めたナイスヴェスター(牝3、ホッカイドウ・坂下秀樹厩舎)の父はマサラッキ(牡13)でこれが産駒初勝利となった。

マサラッキは父マグニテュード(Mill Reef系)、母ローズエントリー(その父カジュン(Owen Tudor系))という血統。現役時代は栗東・増本豊厩舎に所属。デビュー時より、芝の1200を中心としたスプリント路線で息の長い活躍を見せ、6歳時に5度目のG1挑戦で念願のG1タイトル(高松宮記念)を奪取した。通算成績30戦9勝(うち重賞4勝)。

G1勝ちがあるとは言え、血統的にも地味であり初年度から十分な肌馬を集めることは出来ず、種付け頭数は2002年7頭、2003年3頭にとどまっている。現在は北海道・浦河の日進牧場に繋養されている。

種付け頭数だけ見ると、いつ種牡馬を辞めさせられてもおかしくない状況だが、暖かい関係者に見守られて彼は頑張り続けている。